５月の超過死亡急増にコロナワクチンは関係しているか？（後編）

５月の超過死亡急増にコロナワクチンは関係しているのか？（後編）

前編に続き、新規感染者数のグラフと算出結果の表を見ながら、考察を続けます。

超過死亡者数近似値の内訳としましては、
　　　（１）新型コロナ感染症による死亡
　　　（２）医療逼迫のため十分な治療を受けられず他疾患により死亡
　　　（３）ワクチン接種後の死亡
　　　（４）ＰＣＲ検査未実施の新型コロナ感染症による死亡
が考えられます。（４）については、現在病院で死亡した場合は全例にＰＣＲ検査が実施されているはずですから、その人数はごくわずかと考えられますので無視とします。

１月は、まだワクチン接種は始まっていませんので、近似値よりコロナ死亡者数を引いた「2923人」が、（２）に相当すると考えられます。５月は第４波のピークであり、１月は第３波のピークです。状況が似ていますので、５月の（２）も、「2923人」くらいと推定できます。

さて、ここで５月の「本当の接種後死亡者数」を推定してみます。
　　　（接種後死亡者の推定数）＝（超過死亡者数近似値）－（１）－（２）
となります。

結果は「4748人」でした。春期は、冬期より心臓病や脳出血が少ないため、医療逼迫はおきにくく、５月の（２）は「2923人」より少ない可能性があります。一方、第４波ではアルファ株の拡大があり、大阪府では医療崩壊がおきたため、５月の（２）は「2923人」より多い可能性もあります。今回は後者を重視して補正を検討しました。記事によりますと、大阪の５月の超過死亡者数は、最大1300人でした。大阪府の５月のコロナ死亡者数は859人ですので、これを引きますと、441人となります。（２）の補正としては、1.5倍で十分と判断しました。結果は「3287人」でした。更に、接種後死亡者推定数が報告数の何倍かを計算してみました。結果は、１７倍～２５倍でした。

６月では、第４波のピークを過ぎており、医療逼迫は軽減していると考えられます。したがって、（２）の補正を0.6倍としました。結果は「5936人」で、１４倍となりました。

ここで、更に別の観点より倍率を推測してみることにします。以前の私の解説で、死亡者が２５倍とか３７倍とかにならないと辻褄があいません、と説明しました。この解説は見方を変えますと、「厚労省の試算により、ワクチン接種後の死亡者は、実際には最大２５倍～３７倍存在する可能性が示された」と読み解くことができます。ただし、接種者には全身状態の悪い人が含まれていないことを考慮しますと、倍率は１０数倍～２０数倍程度と推定するのが妥当と考えられます。

結論としては、「５月～６月の超過死亡の主因は接種後死亡であり、その推定数は報告数の１０数倍～２０数倍である可能性が示された」となります。政府は、５月～６月の超過死亡者増加の原因を早急に分析し、国民に説明する義務があると、私は思います。

更に考察を続けます。

日本の新型コロナによる人口あたりの死者数は、欧米の十分の一～数十分の一です。その理由はまだ完全には解明されていませんが、日本人は新型コロナウィルスに対して、何らかの強い免疫を有していることが推測されています。 この強い免疫は感染症に対しては有利ですが、ワクチン副反応という点では不利となる危険があります。 つまり、強い免疫のため、日本人は欧米人より、強い副反応が生じる可能性があるわけです。コロナによる死亡者が数十分の一ならば、副反応の強さは欧米の数十倍、接種後死亡者も数十倍という話も、あり得ない話ではありません。

接種後の死亡者数をはっきりさせるには、以前にも指摘したように、接種後１か月以内の死亡・入院の報告を義務化するのが一番確実です。ただし、過去に遡って義務化するのは、現場の負担が過大かもしれません。報告項目を簡略化する検討も必要です。現場に負担をかけずにやるとすれば、私が以前に提案した方法が最適です。マイナンバー法の法改正が必要かもしれませんが、政府がその気になれば難しいことではありません。それを実施すれば、接種後の死亡が偶発的か否かが明確になります。

もし、接種後死亡者が１０数倍～２０数倍であり、偶発的ではないことが判明した場合、新型コロナに対する戦略を練り直す必要があります。たとえば、ワクチンは４０歳代までとし、４０歳未満の人に対しては、治療薬で対応するなどです。高齢者の３回目の接種も再考の余地があります。デルタ株の拡大で若年者のリスクは高くなりましたが、人口あたりの死者数が日本の十倍～数十倍の欧米と全く同じ戦略をとる必然性はありません。もちろん、デルタ株が怖いので接種したいという人に反対するつもりはありません。各人が自分の考えで判断すればよいことです。

何をするにせよ、「現状を正しく把握すること」が、何よりも大切です。 政府には、原点に立ち返ってほしいと、私は思います。

謝辞：超過死亡者数近似値の算出にあたりましては、この解説を参考にさせていただきました。

補足）超過死亡者数近似値の計算方法の問題点について補足しておきます。
１．死亡者は、過去１０年間においては、ゆるやかに漸増しています。厳密には、この漸増に対して補正が必要です。
２．速報より概数で計算した方が正確です。
３．Farringtonアルゴリズムなどを用いて計算した方が望ましいです。
以上より、今回の試算はやや不正確な部分がありました。ただし、問題提起としては十分な精度であったと、私は考えています。今後、統計の専門家により分析され、より正確なレポートが公開されることを、私は期待しています。